さいたま市保育園連絡会

ユージ×柳原和歌子
保育士は未来のスターを育てる重要な仕事。
待機児童ではなく待機保育士がでるほどになってほしい。
さいたま市保育園連絡会ホームページのリニューアル公開記念スペシャル対談は、育児パパとしておなじみのタレントのユージさんと、さいたま市保育園連絡会会長の柳原和歌子に、育児や保育園についての現状やビジョンについて語っていただきました。育児や保育の現場が抱える問題やビジョンのほか、子育ての魅力や夢など楽しいお話を聞くことができました。


保育士を憧れの職業にしよう!


さいたま市保育園連絡会
柳原和歌子会長
柳原会長
さいたま市内にはさまざまな形態の保育施設があります。規模でいいますと、子どもの数においては少ないところで10名前後、多いところでは120名ほどの施設もあります。さいたま市保育園連絡会にはそのうち114の施設が加盟しています。そのような保育施設が一緒になってさまざまな取り組みをおこなっているんです。たとえば小さい施設同士が合同で大型バスで遠足に行ったり、子どもたち向けにクラシック音楽の演奏会を開催したり。いろいろなバックグラウンドを活用した行事を実施しています。さらに行政などへの働きかけも積極的におこなっています。
時代とともに保育園も様変わりしてきました。0~2歳児が中心の小規模保育園も、数年前に待機児童対策として国が制度を整えたという経緯があります。そのような中で私たちは、どのような形態の施設であっても、どのような子どもが来ても保育の質を変えず、そのクオリティーを高めていこうとしているんです。
ユージさん
僕のところは下の子どもが3歳と4歳で、どちらも保育園に通わせていないんです。申請はしたんですが、入園ができませんでした。朝早起きして申し込みに行ったんですけど、すでに長蛇の列で。結果的に抽選になって、はずれてしまって…。そのときに感じたのは、保育園に入れるのは簡単じゃないなってことなんです。いまの会長のお話しにも出た待機児童の問題を肌で感じましたね。待機児童問題は、言葉では知っているという人は多いでしょう。しかしそれは実際に体験してみないとわからないのかもしれません。お子さんを保育園に入れたい親御さんはたくさんいるのですが、現実は厳しくて「待機」しなくてはいけない。しかし子どもはどんどん成長するし、仕事もできなくなってしまいます。とても深刻な問題だと思うんです。子どもの数は減っているのに、なぜ「待機児童」なんでしょう?

育児パパとしてもおなじみ、
タレントのユージさん
柳原会長
おっしゃるように、待機児童の問題は深刻ですが、その問題の背景には「保育士不足」という別の問題もあるんです。園舎はできたのに保育士が集まらずに開園できないということもあるほどなんですね。保育園に入れないから、お母さん方が仕事を辞めなくてはならないという、大変もったいない現象も起きているんです。私も同じ女性として腑に落ちない思いがあります。日本は「お母さんが専業主婦で家にいる」という時代が長かったせいでしょうか、国際的に見てもまだまだ遅れているなと感じています。しかし明るい話もあって、最近はユージさんのように「イクメン」と呼ばれる、育児を頑張るお父さんも増えています。こういうお父さんがもっともっと増えるといいなと思います。子育てを夫婦ふたりで楽しめるといいですね。
ユージさん
最近は共稼ぎの夫婦が増えていますから、そうなるとどちらかが仕事を辞めなければいけないということになってしまいます。その場合、女性が辞めるというケースがまだまだ多いんじゃないでしょうか。キャリアを大切にしている女性にとっては、とてももったいないことだと思います。
僕の妻は仕事をしていないんです。その妻は僕にこう言うんです。「働かせてやってるんだよ」って(笑)。さらに「私が働きに出たらあなたより稼げるから」とも(笑)。そんな風に言われると僕にも意地がありますから「よし!もっと頑張ってやるぞ!」って思えるんですよね。そんな妻の存在が僕のパワーの源になっているし、安心感もあるんですよね。

年1回さいたま市長への
要望書提出
柳原会長
頼もしい、そしてかっこいい奥様ですね(笑)。私たちの会でも、行政などへの働きかけは地道におこなっています。毎年、さいたま市長に要望書など出しているんです。実現しないことのほうが多いものの、その中でも保育士の毎月の給与に10,500円を、賞与には67,500円を加算するという8年ごしの要望が実ったこともあるんですよ。着実に結果は残せていますし、今後も継続していきます。
ユージさん
それはすごい!僕も保育士さんの給料はもっと上げてあげるべきだと思っていたんです。うちではときどきベビーシッターさんをお願いすることがあって、スマホのアプリなどでシッターさんの経歴などを見ることがあるんです。すると「元保育士」という人がけっこういて。最近とても増えているように感じますね。こういう人は、本当に子どもの世話をすることが好きなんだと思うんですよ。しかし保育園や幼稚園などの労働環境や待遇などに見合わないものを感じて、現場を離れてしまったんじゃないでしょうか。こういったところにも問題の一部を見てしまったような気がしてならないんです。保育士さんの待遇をもっとよくしてあげて、給与面からも憧れの職業みたいになるといいですね。待機児童ではなくて、逆に「待機保育士」が出てしまうくらいに(笑)。
柳原会長
大学で保育士の資格と取得して卒業しても、保育士にはならない人が多いんです。まったく違う業界に行ってしまうんですね。やはり就活中に待遇面を比較してしまうんだと思います。この問題は深い部分で少子化の問題ともつながっていますし、これからの日本の経済的な成長にも関わることですから、私たちも地道に行政への働きかけは続けていきます。
また保育士は、ただ園で子どもの世話をしているだけじゃないんですね。とくに最近は子どもの安全、生命に関わる危機管理なども、しっかり対応しなければなりません。不測の事態に備えて研修を受けたり、行政側と連携した業務をおこなったり。たとえばAEDの使用についても消防の指導を受けています。アレルギー対策にもマニュアルがあり、重篤な子や比較的軽度な子まで細かく規定されています。また保育園の給食は園内で調理していますから、ここでの作業も細かく目を配らなければなりません。災害が発生したときには、避難所などでの非常食にも気を使わなくてはならないので、名札に禁止食を明記するなどの対策もおこなっています。
ユージさん
保育士さんたちには本当に頭が下がります。自分の子どもの場合は「パパは疲れてるからあとでね」と言えますけど、保育園ではそうはいきませんよね。僕の場合は小さい子がふたりだけですが、保育園は自分の子どもではない子がたくさんいるわけですし。自分のふたりの子どもだけでヘトヘトなのに、その何倍もの子どもの世話をしているんですから。それに加えて、子どもの安全や健康にまで気を使わなければいけない大変なお仕事だと思います。

消防の指導によるAED研修

子育ては女性の方が大変。だから「イクメン」という言葉は使わない

ユージさん
僕は父親になって、育児って本当に大変だなと思いました。どこの家庭にもそれぞれの事情があると思います。共稼ぎのところもあれば、一方だけが働きに出ているところなど、いろんなパターンがあるでしょう。しかし育児に関しては必ずモメるんじゃないでしょうか。どちらかが「平等じゃない!」なんて言い出して。お互い、それぞれが担える役割が違うので、平等なんてありえないんですけど。でも夫婦ってどこかで平等を求めてしまうんですね。「私のほうが子どもといる時間が長い!」とか「いや、俺のほうが働いてる!」とか。自分たちに問題があるんじゃないかって思っていたんです。しかし育児がひと段落して客観的に見ることができるようになると、どこの家庭も同じなんだってことがわかったんです。ああ、うちだけじゃないんだ、うちに問題があるんじゃなくて、育児ってそういうものなんだなって。
柳原会長
本当にそうですね。恋愛からスタートして、結婚して、最初は夫婦で楽しく過ごしていても、出産したとたんに状況が一変しますから。それまでは想像もしなかった世界が始まるわけです。
ユージさん
恋人からスタートして、結婚してハッピーな気持ちで毎日過ごして、そして子どもを授かる。お腹が大きくなって、エコー写真で姿が見えて、子どもの服を買いそろえたり。ここまではもうワクワクの連続なんですけど。いざ生まれたら、その日から地獄が始まりますから(笑)。10カ月間、夫婦で父親や母親になる準備をしっかりしてきたはずなのに、そこだけ!まったく未知の世界です(笑)。
柳原会長
そうそう(笑)。そこだけが想像できていない初体験の部分なんですよね。子育ては24時間365日勤務です。会社勤めのようにお休みをとるなんてことができないですから。
ユージさん
そんな中で僕たちは「イクメン」という言葉は使わないようにしています。「イクママ」って言葉はないですよね。実際は女性のほうが大変なのに、男性がちょっと育児をやっただけでイクメンって言われるのはやはりしっくりきません。
あるお正月に7日間の休みをもらえたことがあったんです。妻が二人目を妊娠していたので、家で過ごすことにしました。その7日間だけ、妻がやっているをすべて僕が引き受けたんですよ。炊事も洗濯も掃除も、もちろん子育ても。妻には一切頼りませんでした。その7日間が終わって、明日からまた仕事だという夜に、僕はソファーに座って「はぁ~!疲れたぁ~!」って言ったんです。すると妻が「たった7日で?」って。そこでハッと気づいたんです。妻はこれをノンストップでやっているんですよ。僕は仕事も育児もやって大変だと思っていましたけど、育児だけっていうのも同じくらい大変なんだって。だからイクメンって言われることに抵抗を感じるんです。

保育の現状や育児の体験談などを
お話いただきました
柳原会長
育児はとても大変ですが、楽しい面もあると思います。最近はユージさんのように、SNSなどで楽しい育児シーンを発信する人が増えていますよね。みなさんに、もっともっと発信してもらって「育児って楽しそう」と多くの人が思ってくれるといいなと思います。
悲しいのは、辛いことばかりに目を向けてしまうことです。待機児童の問題もそうですね。保育園に入れない、仕事は辞めなければいけない。「こんなことなら生まなきゃよかった」と思ってしまう親御さんが増えてしまうのは残念ですね。
ユージさん
子どもを育てるってある意味、未来のスターを育てているようなものなんですよね。僕の場合は3人いるので3人の未来のスターです(笑)。そういったことを考えると、子育てって夢があるなって思えるんです。保育園にはもっとたくさんの子どもがいます。大勢の未来のスターに触れ合うことができる素敵な仕事なんですよ。もちろんスターにならなくてもいい。その子の人生のスタート地点に立ち会える、夢と希望に満ちた職場なんじゃないでしょうか。未来を担う子どもを育てる、とても重要なお仕事です。もっと働きやすく、そしてもっと待遇が改善されていくといいですね。
―――ありがとうございました。おふたりのお話から、育児や保育の現場の現状の一端を垣間見ることができました。子どもを生み、育てることはとても尊いことで、家庭においても保育園においても100%の正解などないでしょう。その答えは育てられた子どもにしかわからないことなのかもしれません。私たちが今できることは、子育ての環境を少しでも整えていくことなのではないでしょうか。
ユージ・プロフィール
1987年9月9日、アメリカ・フロリダ州生まれ。曽祖父はドミニカ共和国の元大統領、父はハリウッドで活躍する俳優、母は日本人の元モデル。映画「アカルイミライ」でデビュー。ファッション誌のモデル、役者として活躍したあと、バラエティ番組などで活躍中。2014年2月に結婚。現在、3児の父親として育児に奮闘中。NHK Eテレ「すイエんサー」、CBC「ゴゴスマ」等にレギュラー出演中。

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