さいたま市保育園連絡会

「保育士不足解消」と「選ばれる保育園になる」ためにICT化を検討するべき
 保育施設に入所したくてもできない「待機児童」の問題がクローズアップされるようになって数年が経ちますが、併せて「従事する保育士不足」も大きな課題として注目されてきています。今回は保育士に特化した人材派遣などを行う株式会社アスカの代表取締役社長、柘植航さんにお話をうかがいました。柘植さんから見た保育士不足の実情や今後の保育園のあり方とはどのようなものでしょうか。

いまは保育園も働き方もさまざま。自信を持って資格を生かしてほしい

 現在、保育士養成系の学校で資格を取得する人は4万人ほどいますが、そのうち卒業後に保育士になる人は半分の2万人ほどしかいないと言われています。つまり資格保持者の半分ほどが保育とは関係のない他の業界に行ってしまうのです。保育士になった人も、その70 ~ 80%ほどは数年で辞めてしまうようです。離職率の高さも問題になっています。
 資格を持っていながら保育士にならない人、あるいは保育の現場を離れてしまった人を「潜在保育士」といいます。現在、潜在保育士は70 ~ 80 万人ほどもいるとされており、これらの人がすべて保育士になれば不足問題は解消されるのではないかという指摘もあるのです。結婚や出産、あるいは職場の人間関係や業務過多などが理由で保育士を辞めてしまう人も多いのですが、元々は「子どもが好き」「子どもの世話をしたい」という想いを持って保育士になった人ばかりではないでしょうか。いま、保育の現場も変わりつつあります。保育園の種類や雇用形態もさまざまで、自分に合った働き方を選ぶこともできるようになってきています。子どもの笑顔に触れ、その成長を身近で感じられることが、保育士という仕事のやりがいでもあります。
 私たちは、保育士に特化した人材派遣などを事業として展開しており、保育の現場に戻りたいという希望を持つ人のお手伝いもおこなっています。保育士の資格を取得した人は、いわば「手に職」を持っている人です。せっかく取得したのですから、自信を持ってそれを生かすべきだと思います。保育士は40 歳代、50 歳代になっても必要とされる存在です。

労働環境を改善し保育士負担の軽減を

 子どもが好きで、その世話をしたいという志を持って保育士になる人がほとんどでしょう。できないことができるようになった子を見たときの喜びや、子ども独自の視点で大人が気付かないことに気付く姿に驚かされるなど、保育士でしか経験できないやりがいや感動があります。
 その一方で、子どもの世話以外の業務が多いのも現実です。日誌や連絡帳を書いたり、保護者対応やイベントや行事の計画や準備などもあります。これらの業務の負担が大きいという声も聞かれます。こういった業務の多くがアナログな作業で進められているケースも多いのが実情です。デジタルなものに慣れてしまっている若い世代には、ちょっと辛いのかもしれません。
 保育士が本来の業務に専念できるようにするための施策は必要です。このような事務作業などは専任のスタッフに任せる方法もあります。同時に、保育園のICT化を進めることで、業務の簡素化・効率化を図る必要があると思っています。例えば手書きの書類や、電話・ファックスなどを使っていた作業をICT化していき、子どもの世話:事務作業の理想的な割合として9:1ほどにすることで、保育士の負担は大幅に軽減され、子どもと接する時間も増えていくのではないでしょうか。

「選ばれる保育園」になるために取り組むべき課題

 またICT化は、保育士の負担軽減につながるだけではありません。保護者から「選ばれる保育園」になるためにも必須だと考えます。いまの保護者の多くは20~30歳代で、早い時期からパソコンやウェブなどに慣れ親しみ、使いこなしてきた世代です。SNSなどにも日常的に接しています。
 保護者が保育園を選ぶ際に重視することは、かつては「自宅や職場から近くて便利」というものが中心でした。とくに子どもが一世帯に2~3人いた時代は「子どもの預け場所」という認識があったと思います。しかし今は多様な家族構成が増えており、場合によっては子どもへの保護者負担が軽減したことで、保育園を選べる要因の一つになっているのでしょう。単なる預け場所ではなく「教育や指導もしてくれるところ」として期待している保護者も多いのです。園で英語やプログラミングをやっているか、見ている保護者も少なくありません。
 保護者の中には、紙のパンフレットは見ない人も多く、必ずと言ってよいほど園のウェブサイトをチェックします。ウェブサイトがない園は対象外にされている可能性もあります。それもまめな更新が必要で、公開されている情報が何年も変わっていないウェブサイトは、保護者からは見てもらえなくなります。また園選びの際に、保護者はSNSや口コミサイトなどもチェックしています。これらには園の評価が書き込まれることが多く、それを参考にしている保護者も多いのです。
 ITやICTに慣れた若い世代ならば、ウェブやSNSなどの活用方法を含め、画期的なアイデアを出してくれるはずです。自分で園のウェブサイトを作ってしまう人もいるでしょう。若い保育士が現場に定着し、活躍してくれるためにも、私たちも保育士の魅力をアピールしていきたいと考えています。

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